プロジェクト紹介

長野駅東口区画整理事業 駅南幹線融雪施設さく井工事

工事箇所:長野市中御所
工事概要:無散水融雪用さく井工事

長野駅の西と東をつなぐ道路

長野市の冬の最低気温は平均で約-4℃、最高気温もおよそ3°と全国でも非常に寒い地域の一つである。積雪量も昔ほどではないが、今でも定期的に数十cmの降雪があり伝統的に寒さや雪と共存している街となっている。
本工事は長野駅の西口(善光寺がある側)と東口をつなぐアンダーパスの無散水融雪用の地下水供給に向けた井戸の掘削工事(通称さく井工事)である。冒頭で紹介したように長野市は冬季になると日中でも氷点下になることもあり、至るところで路面凍結の可能性がある。特に交通量が多くリスクが高い場所には、地下水の温度の高さを利用し、地中に埋め込んだパイプ内に井戸水を循環させて融雪する(地下水開発事業ホームページ参照。)この工事は交通量の多いアンダーパスの路面凍結を回避すべく、地下水を利用した融雪設備のための井戸を掘削することを目的とする工事である。

  • 位置図
  • 無散水融雪設備:地中に埋め込んだパイプ内に井戸水を循環させて融雪します。

住宅地の中での掘削作業

井戸の掘削は当初は2本を予定しており、この2本分の地下水を利用して融雪を行う計画であった。だが、掘削地点は長野駅から徒歩5分程度の市街地でありアンダーパスの両脇は住宅密集地。現場担当者は『住宅地に近い場合、防音用の仮囲いを設置して対策を行うがそれでも音や振動が起こることがあります。これをどのくらい減らせるか?ゼロベースでいろいろな案を考えました』と語る。結果として出てきた案は当初の計画であった2本の掘削を1本とすることで地域住民への負担を軽減できないかというものであった。一方で別の問題が発生した。それは1本の井戸で元々計画された2本分の地下水量を取れるのか?という問題である。


掘削(手前は仮囲い)

「経験」を武器に地下水を読む

現場担当者は井戸の掘削のベテランであり、これまでの経験を踏まえて掘削深度の検討を行った。まず掘削前に付近の井戸のデータを調査し水が豊富な地層の深度を調査し掘削深度の仮説を立てて掘削に入った。併せて掘削後には電気検層を実施した。電気検層は地層の違いにより電気抵抗が変わり、水を通さない粘土層で低く、水を通しやすい砂礫層(砂や小石の層)で高い傾向になる。これを利用して地下水が入り込みやすい地層とその深度を見極め、スクリーン(水を取り込む管)の設置を行った。
「井戸は掘ってみないと水の分布や水量はわからない部分があります。その位、地下は未知の部分が多い。でも、これまでの経験と調査で仮説を立て、今回のようにうまくいった時は技術者冥利に尽きます。」
結果的に本工事では150mの掘削を行い、地下水豊富な帯水層を見極めることができ当初計画していた2本分の地下水量を1本で満たすことができた。本工事を行ったアンダーパスは2020年2月に無事開通し、現在は長野駅の西と東をつなぐ交通の要所となっている。